神戸市が野良猫に不妊手術…猫との共生条例施行

 

20170422

 

手術を終えて地域に戻された猫。神戸市は繁殖抑制とともに共生の道を探る考えだ(神戸市長田区で)

 神戸市は4月から、野良猫に去勢・不妊手術を施して地域に戻す取り組みを始めた。同市は猫の殺処分率が政令市で最も高く、

持ち込まれる数を減らすため、条例を施行し、市側の判断で手術ができるようにした。住民が野良猫の世話をする「地域猫活動」

の広がりを受け、手術費の助成制度を設けている自治体は多いが、自ら繁殖抑制に乗り出すのは珍しい。

 1日施行の「神戸市人と猫との共生に関する条例」によると、獣医師会、愛護団体などでつくる協議会が、苦情の多さなどを考慮

して地域を選定。野良猫を捕獲し、市の費用負担で手術を施す。地域に戻しても一代限りで寿命を全うするため、繁殖を抑えるこ

とができる。

 環境省によると、2015年度の猫の殺処分率は全国平均が74・4%に対し、神戸市は87・6%で、3年前の99%から改善した

ものの高止まりしている。

 殺処分を減らすには、新たな飼い主を見つけることが理想だ。

 15年度は1・8%と政令市で2番目に低かった広島市では、保護された905匹のほとんどを愛護団体が引き取った。18・3%の

札幌市では、行政から猫を引き取り、次の飼い主が見つかるまで預かるボランティア活動が盛んだ。

 ただ神戸市の場合、有力な団体が少ないこともあり、飼い主が見つかるケースは1割程度。15年度は保護された768匹中91匹

しか引き取りがなく、まずは繁殖抑制を進めることにした。

 市は毎年120か所の地域を選び、1か所あたり10〜20匹程度に手術を施す予定。年間1000匹以上を目標としている。今年度

当初予算に事業費として約2000万円を計上した。市の担当者は「来年度には殺処分率を40%まで減らしたい」としている。

 東京農業大学の太田光明教授(人と動物の関係学)の話「成果を出すには、野良猫の居場所などを知る住民の協力が不可欠だ。

ただ地域に戻すことを歓迎しない人もいる。市には、取り組みへの理解を浸透させる役割も求められる」

 

20170422 Copyright © The Yomiuri Shimbun