− ひとりごと −
ゴミ捨て場で、壊れたギターを拾った。何気なく、ポーンと音を出してみた。背中に水を流れるのを感じた。神秘的な音にこころがドキドキした。夢中になった。
友だちのいなかった俺の心をやさしく慰めてくれた。10歳の時である。以来、ポーンからポローン・ポローンと音を重ねていくうち、アイヌのじいちゃん、ばあちゃんが焼酎を飲みながら歌っていたのをつま弾いていた。今でも楽譜はよめない。大自然から聞こえる音をメロディにしている。
自ら演奏し、自らの魂に聴いてもらい、さらにカムイ(神々・自然界)に聴いてもらってきた俺の音楽を、不思議な連中がCDにした。ひとり歩きした。恥ずかしかった。カムイと俺のための音楽だと思っていたのに、見ず知らずの人も感動したというから驚いた。
俺たちアイヌ民族の祖先は「役割なくしてこの地球に存在するものはない」と考える。俺の音楽に感じてくれる人がいる限り、不思議な仲間とともに、心静かに、湧き水のような音楽を作り続けたい。